古本ソムリエの日記

古書善行堂 山本善行

こんなときにも古本の神様が

 店舗を内装、まずはもとの状態、何もないスケルトンにもどす。今日、昼過ぎ、店の前に行き、作業を見守る。
 手際よくどんどんはがしていく。これもまた長年経験すればプロの技になっていくんだろう。
 隣は、千原書店があったところ。いい古本屋さんだった。
 千原さんの横で店が出せるなんて。
 その隣はアメリカ人が住んでいて、日本の骨董を集めてアメリカで売っているらしい。古本屋をするのだと言うと、日本の古い本は高いですね、なんて言っていたが、どんな本のことだろう。話していて、ぱっと横を見ると、魚雷くんと、この前もいっしょにいたカメラマンが。驚いたなあ、少し話し、店にきてね、と宣伝しておく。店の前で写真を撮ってもらった。
 4時ごろ終わるというので、自転車で、日本政策金融公庫に向かう。
 4時にこれからの打ち合わせをすることになっていたので、古本屋をまわる時間はない。
 それでも帰り、5分ぐらいなら、遅れてもいいだろう、そうきっちりと仕事は終わらないだろう、と一軒だけ古本屋さんに寄ることにした。
 これがよかった。いい本がぼくを待っていてくれた。今年のベスト10に入る買い物ではないだろうか。
 『佐藤先生を憶ふ』(昭和8年、非売品、近江八幡組合基督教会日曜学校発行)。
 よくぞ、抜き出したものである。あの建築家ヴォーリズとともに働き、建築デザインの分野で活躍した、佐藤久勝の追悼文集だったのだ。
 大丸心斎橋店などのすばらしい仕事が残されたが、佐藤久勝は若くして亡くなった。旧佐藤久勝邸も有名だ。100円で買える本なんてたかが知れている、100円は所詮100円だ、という意味の文章をどこかで読んだことがあるが、いえいえ100円でもいい本が買えますよ、と今日は言いたい。