古本ソムリエの日記

古書善行堂 山本善行

嘉村礒多三昧

zenkoh2008-01-23

 黒猫堂の高橋さんとの思い出はいくつかあって、いつか、書き記しておきたいと思っている。
 今日もいつものように自転車で家を出たがまわりの景色がちょっとちがって見えた。気持ちが清められたと思った。
 あーす書房の前、あーすさんがいたので挨拶する。風邪をひいたということでしんどそうだった。
 福田屋さんに寄ることに。店内で、山内義雄(やまのうちよしお)随筆集『遠くにありて』、400円を購入する。文芸文庫で持っているけど。まあ、目が悪くなったときのことを考えて。
 「モダン焼きふじ」でモダン焼きを食べる。安くてうまい。いつも100円券を使えるので530円で、でっかいモダン焼きが食べれる。店主の愛想よすぎるのが最初は気になったが、よく観察してみると、お客だけでなくて、バイトにも、出入りの業者にも愛想いいので、気にならなくなった。いつも古本持っているので、私が「古本や回り先生」だということもバレている。
 三条ブックオフ、最近人気あって、たくさんの人がいた。いつも見かける人も。ぼくもそう思われてるのだろうが。でもここでは「古本や回り先生」だというのはバレてないみたい。
 山田登世子『華やぐ男たちのために』、200円。副題にこうある。「性とモードの世紀末」
 このところ、嘉村礒多ばかり読んでいる。新潮文庫、角川文庫、河出文庫岩波文庫に入っていたんだよなあ。やっと、新潮文庫を今見つけ出したところ。山本健吉篇。解説を読むのも楽しみだ。明日持っていこう。とにかく凄い世界である。私小説の極北だ。同じことを繰り返し書いているのだが、あの手この手の文章でもあって、読み進むうち、やめられなくなってくる。小林秀雄福田恆存嘉村礒多の小説を褒めていたが、確かに、今回読み直し以前とはまたちがった感想をもった。あまりにも愚かな性格ではあるけれど、こう巧みに語られては笑うしかない、そんな気持ちになった。
 やっぱり私小説はいいもんだ。それで後ろの本棚を見ていると、一冊の文庫に目がとまった。集英社文庫の『私小説名作選』。これ皆さん持ってるでしょうか。田山花袋の「少女病」から、高井有一の「仙石原」まで。中村光夫選というのが笑えるじゃないですか。あれだけ私小説の評価に厳しかった中村光夫選だとは。本人も巻末の、水上勉との対談解説で、ぼくに編集させるというのは皮肉だと思った、と述べている。でもさすがにいい作品を選んでいる。田山花袋の「少女病」なんて読んでみたくなるよ、この題。
 この文庫、最近見ないが、ネットで安く買えそうである。(いや、結構高かった)。
 ぼくは、白水社の『嘉村礒多全集』が欲しいなあ。