古本ソムリエの日記

古書善行堂 山本善行

四天王寺さん

zenkoh2007-10-05

 
 8時38分の特急に乗る。連日の古本まつりのため、寝不足が続いている。この日も、電車で、佐藤泰志を読む。
 天満橋で降りて、谷町線の方に歩いていくと、扉野くんの姿。一緒に話ながら四天王寺に入る。8日の「まほろば古本まつり」、ユリイカ臨時増刊「川島雄三」、加能作次郎、水明洞、びわこのなまず先生、そんなことを話ながら歩いた。
 10時前に100円均一の前。カバーがかけてある。この前は時間前にもう買っている人がいて驚いたが。扉野くんと相談した。
「どうやろ、他の店が気になるな、水明洞とか」
「水明洞に先、行きますか」
「むずかしいな、100均からスタートしないのは、ちょっと」
 とりあえず、水明洞を見に行き、ぼくは、やっぱり100均にもどる。
 100均だけでいえば、天神さんの方がよかった。2冊しか買えなかった。中谷宇吉郎『回想寺田寅彦』は、持っているのとちがうようなので。ディック・フランシス『女王陛下の騎手(晶文社)』、自伝。
 100均に見切りをつけ、次にたどり着いたのは、1冊300円、5冊1000円の台。量もたくさんあり、いい本もありそうな感じ。背をざあっと見て行く。
 あっ、中谷孝雄の『旅情』(昭和17年、天理時報社)が、田村泰次郎の『不良少女』(昭和24年、蜂書房)もいい感じ、武者小路実篤の『続人生論』は、甲鳥書林の小型本、やっぱり甲鳥書林はすごい。尾崎一雄『沢がに』、加藤一雄の『蘆刈』はカバーなしだけど、買っておく。これで5冊1000円か、安い。
 いろいろ見て回り、後藤明生『嘘のような日常』、植草甚一モダンジャズのたのしみ』、渡辺一夫の『ふらんす文學襍記』はあまりに安い(500円)ので。
 アンドレ・ジイドの『田園交響楽』は、竹内道之助訳、昭和9年、三笠書房、300部限定、総革天金マウント装、本文用紙は、手漉鳥の子紙、小型本、500円。
 《買って帰り、塾の机の上に置き。天金を拭いたり、函から出したり入れたりと、もてあそんだ。それで横に置いといたのだが、ちょっと立ち上がり動いたときに蹴飛ばしてしまった。
 「アッ」と声をだして見てみると、函の底が少し壊れていた。ショック。》
 梅田に出て、ジャズ喫茶に行こうと四天王寺を出たが、天神さんにも寄ることにする。追加が気になるところ。100均に着くと、林さんの姿。
 1冊だけ買う。兼常清佐『音楽と生活』(昭和10年、岩波)。なぜこの当時の岩波の本、こんなに重いんだろう、紙質の問題か。

 大阪駅前ビルの地下2階で、釜揚げうどんを食べ、ジャズ喫茶「ホワッツニュー」に入る。
 アート・ペッパーブッカー・リトルレイ・ブライアント。そしてコルトレーンの「スターダスト」がかかったとき、やっぱりコルトレーンは特別だと思った。コルトレーンをガンガン聴きたくなる。
 ジャズを聴きながら、買った本を取り出し、ちくま文庫手帳に、書き込んで行く。やはり、中谷孝雄の『旅情』がうれしかった。こっそり買えたと思っていたが、中尾さんにあったとき、
 「旅情、だれでしたか」と言われたのだ。まわりにいろいろ凄い人がいるなあ。また「旅情、いい色してたね」とも。ちゃっかり色までチェックしている中尾さんスゴイ。
 天理時報社のこの本が、200円とは。
 田村泰次郎の『不良少女』もいい本だった。高沢圭一の装幀、カット。