古本ソムリエの日記

古書善行堂 山本善行

天神さん

zenkoh2007-10-04

 カーティス・フラーの「サウス・アメリカン・クッキン」を聴きながら、対談に手を入れる。

 天神さんに行くのに、佐藤泰志の『大きなハードルと小さなハードル』を持って、家を出た。『黄金の服』や『きみの鳥はうたえる』や『移動動物園』が天神さんにあればいいなあ、と思い思い、電車のなかで、佐藤泰志を読んだ。
 天神さんの100円均一台の前で、開店を待つ。松岡さんや、いつもの顔顔顔。
 とりあえず気になった本を抱え込んで後で戻せばいいのだが、すぐ持ちきれない量になってしまった。島村利正の『青い沼』や、EDI叢書『水野仙子』、永井龍男『けむりよ煙』(風間完装幀)などを手元に残し、またぐるぐる廻る。ひとが持っている本も気になる。書紀書林の詩集に目が止まる。財部鳥子詩集『月と比喩』。平出隆発行の感じよい詩集だ。ジェームズ・キャグニー自伝『汚れた顔の天使』これは迷わず手に持つ。和田誠の装幀で、山田宏一宇田川幸洋訳。坂上弘『ある秋の出来事』、中谷宇吉郎『秋窓記』(青磁社)、益田義信『さよなら巴里』は裸本だったけど、大学図書館の除籍本だったけど、河盛好蔵の序があった。その文章で、この本には、梅原龍三郎の風貌姿勢が随所にあること、藤田画伯の最初の夫人フェルナンド・バレの晩年を描いた章は傑作、そういうことを知ることができた。中央公論の臨時増刊『二十世紀日本文学の誕生』は、副題に、中央公論文芸欄の100年とあったので、買っておく。太田正雄『葱南襍稿』(東京出版)は迷わずに。正宗白鳥の『一つの秘密』は、題はよくないが、内容はいい。『如是間著作集』は創作の巻(養徳社)。D・H・ロレンスチャタレイ夫人の恋人について』は、付箋がいっぱいついていたので。
 サイン本も100円だと買ってしまう。武者小路実篤の『美はどこにも』には、「美 愛 眞  実篤」と。宮本輝『螢川』には、「生涯不屈 宮本輝」。大内兵衛『我・人・本』にもサイン。
 昼飯は北村くんとお好み焼き定食。天牛や矢野も廻り、もういちど100均にもどると、さすが電気人形、松岡さんがはりついていた。この後、精魂使い果たした二人は喫茶店に入った。
 住道の駅前の花壇の隅に座り、ユンケルを飲みながら、幸運にも買うことができた本に簡単な挨拶をした。
 実家の戸を開けてすぐ、
「これは、みんな、そのまま持って帰るから」と大きな声で言い訳する。
「それやったら、外に置いとけば」
「いや、ちょっと調べたりせなあかんし」と苦しい言い訳になる。