古本ソムリエの日記

古書善行堂 山本善行

朝、金子さんのブログを見る。そのなかにこんな詩があった。

2011-01-25  あかり


小さい靴は
生乾きだったから
寝る前に
新聞紙を詰めた
長靴を履きたくない
その一心で


雪を含んだ雲が
地を照らしている
ふるさとを
美しいとは思えない
時を
誰もが一度は
迎えるのだろう


連山にかかる
すばるは
変わり映えしない
時報のようだ
けれど
なんども戴いた空の
氷雪のような耀きは
なんという遠さ


星座を新しく語ろうと
している
さなかに
光はことごとく
目の中で
とけていく


こんなにも
時を費やしてきた
飴をなめるような
気安さで
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朝の詩


為政者を海に見送り
その国の広場では
紙屑が拾われている
という
客を迎えられると
青空もひろげられる


別の国では
民衆は警察に囲まれ
また次の国で
学生が声をあげたという
カーラジオより


解説の声はこぞって
その将来を案じるが
老いた国で、くりごとを
聞かされ
街並みはつぶれかかって
いるのだ
死なないための方策も
教えられず
下ろした看板は
放置されたまま
缶は転がっている


2月13日午前8時23分
誰も歩いていない
犬も、猫も
仕方なく、
シートを倒し
白い空を
窓に貼りつけたまま
携帯を叩いてみる
時報を聞く者など
誰がいるのだろうと
からくり時計のことを
書いたりする

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善行堂の奥の方から片付けはじめる。
ダンボール箱を開けて、どんな本が入っているのかをチェックしました。在庫は大事ですが、いい本でないと楽しくない。疲れると、土門拳の『風貌』を眺めたりしました。今まで、文庫本で満足してましたが、どうしてもアルス版が欲しくなり買ったものです。この装幀、亀倉雄策ですが、彼の代表作だと言っていいのじゃないでしょうか。土門拳、写真も文章もいいですね。