古本ソムリエの日記

古書善行堂 山本善行

彷徨と回帰

 三省堂追加分の古本まとめる。40冊余りの一箱。金曜日には神保町に着くはず。
 その勢いでガケ書房にも古本を追加する。ガケには、「文學入門Tシャツ」があった。売ってるので買いにいってください。今年の下鴨古本まつりは、このTシャツを着てまわりましょう。きっといい本に出会えるよ。ぼくはグレイのが欲しくなった。
 古本屋さんいろいろまわって、この文庫一冊。
 ヘンリー・ミラー『オプス・ピストルム』、田村隆一訳、いわくありげなタイトル。池田満寿夫のカバー。
 この前、池田満寿夫の『私の調書』を久しぶりに読み返したが、やっぱり面白い。角川文庫に入ってた他のエッセイ集も読み返したい。
 古本ソムリエは、文庫一冊で帰るわけにはいかない。
 でもどうしても買えなかった。これだけ並んでるんや、なんかあるやろ、と脅しをかけたがダメだった。
 それならばとCDコーナーにへばりつく。
 キース・ジャレット、タウンホールでのスタンダードライブ盤。キース・ジャレットは自慢じゃないが一枚も持っていない。
 どうだろうかこのCD。後半の演奏はいいと思わなかった。ラジカセの音のせいか。でもこんな音でも、いいなあ、と思えるときがある。何回も聴いていくうちにまた気持ち変わるかも。
 電車のなかで、ずっと、中野章子『彷徨と回帰 野呂邦暢の文学世界』を読む。
 野呂邦暢のいい文章が引用してあるので、野呂邦暢を読み返したくなる。
 何にするか。短編はもちろんいいのだが、ゆったりと進む『丘の火』や『愛についてのデッサン』も好きだ。
 『小さな町にて』は愛読書といっていいほど読み返している。ぼくも死ぬまでに一冊こんな書物エッセイが書き残せたら、といつも思う。
 中野さんはちゃんと、山王書房のことにも触れている。巻末の未収録作品を見る。やはり野呂邦暢全集が待たれる。文庫だと岩波文庫が合うと思う。
 もちろん今元気なウェッジ文庫でもいいけどね。ぼくなら、未収録エッセイをどかんと入れる。
 そんなことまで考えてしまう本だった、中野章子『彷徨と回帰』。