古本ソムリエの日記

古書善行堂 山本善行

また松川信康

zenkoh2008-01-16

 ソニー・スティットの「テューン・アップ」を聴きながら。 
 出町柳へ向かう途中、自転車を降りる。
 小山書店の『チェーホフ選集』がある。小山書店の本造りも好きだ。ただ、チェーホフは、中央公論の全集をもっているし、ちくま文庫のも相当持っているし、各社の文庫も。
 でも、この小山書店版はいい出来だ。5冊で250円と安いこともあり、買うことに決めた。
 チェーホフバルザックやメリメなどは、濫読期に読んで、読書の楽しさを教わった。ぼくは神西清の翻訳が好きだった。
 三条ブックオフに途中下車。毎日同じこった。地下2階からエレベーターで3階に直行するのだが、乗り込んで、3→閉まる、のボタンを押すのも、ひとつの流れのようになっている。
 200円になってしまっているので、以前の半分も買えない。三木のり平『のり平のパーッといきましょう』200円だけにしておく。聞き書きだけど面白そう。
 最初のところに、聞き書き者が、のり平に怒られた話が書いてあった。タクシーでおくっていったとき、「交差点のところでいい」という、のり平に対して、この聞き書き者、「家の前まで行きますよ」といったという。これは、気をつけなくてはいけないことだと思った。
 現代詩文庫『中江俊夫詩集』も買いそうになったが(持っているだろうが)、魚のなかの時間、が少ししか入ってないので、やめとく。もっと多く入っていれば、あるいは105円だったら、今読みたい気分なので買っていただろう。第一芸文社のは、とても高価で手がでない。
 特急に乗り、京橋の紀伊國屋書店で新刊本チェックをしていると、何だか異様な雰囲気。友人の松川信康が、講談社文庫をみていた。やはりな。わかるんだよな。
 ツイン21古本フェアにいっしょに行く。
 すると、『中江俊夫詩集』があった。初期詩篇、魚のなかの時間、暗星のうた、が入っている、山梨シルクセンター版で、1000円。これは買わないと。それと、羽切美代子訳のビートルズ詩集、新書館、500円。
 松川と喫茶店に入る。すると松川、ホットコーヒーに目薬のようなものを5滴入れた。ぼくのコーヒーにも入れようとするので、慌てて手のひらをカップの上に置いた。
 また聞くと、ややこしい話になりそうなので、「ぼくはええわ」とだけ言う。でもやはり、ややこしい話になった。
 「これ目薬とちがう。水晶のなかにたまった水や。善行、地学部やったから知ってるやろ。水晶のなかに水が閉じ込められてる場合があるんや。それをこうして5滴たらすとな身体にええんや」
 うーん、それにしても。
 今、深夜の3時半。どうして眠れないんだろう。
 ウイスキーを飲みながら、セロニアス・モンクの、ラストレコーディングをまた聴いているが、これはほんとに凄い演奏だ。無私の心境とでもいうか。
 聴きながら、詩集、魚のなかの時間、を読む。いいなあ、これも。なぜか、モンクのピアノの音とともに、水の流れる音が聞こえる。酔っぱらっているのか。


夜と魚  中江俊夫



魚たちは 夜
自分たちが 地球のそとに
流れでるのを感じる
水が少なくなるので
尾ひれをしきりにふりながら
夜が あまり静かなので
自分たちの水をはねる音が 気になる
誰かにきこえやしないかと思って
夜をすかして見る
すると
もう何年も前にまよい出た
一匹の水すましが
帰り道にまよって 思案もわすれたように
ぐるぐる廻っているのに出会う