古本ソムリエの日記

古書善行堂 山本善行

松岡荒村

zenkoh2007-09-29

 昨日、古本、充分満足したのに、また今日も足が古本屋さんの方に行きたがる。
 いい本が買えれば、今日も、と欲がでるし、買えなかった次の日は、今日こそは、と張り切ってしまう。
 今日など、仕事が休みなので、家で昨日買った本を読んでいたらいいようなもの。でも、昨日回れなかった京都の古本屋さんが気になって。私を待ってくれている古本がありそう。
 水明洞やね、やっぱり、と思い家を出た。平安神宮近くで、カレーうどんを食べる。これが美味しい。なんで昼飯抜かなあかんねん、とつぶやきながら、ふうふういいながら、食べた。
 水明洞につくが、雨模様のせいか、箱が少ない。古い百人一首が箱にいっぱいあって、大将(店主)に、「これみんなで100円か」と聞いているなじみ客。「一枚百円」とそっけない。
 「印刷やろ」「石版かも」「まとめてなら1800円で」などと話している。古い薬袋などもまとめて買っていた。水明洞は、今、すごい。何が出されるかわからない。大将もええかげんな所あって面白い。「それは500円ぐらいの値打ちある」などとやっている。よくわからない。ぼくは店内に入る。前から気になっていた本があり、値段が付いていないのだ。大将に聞いてみよう。そんなに高い値はつけないと思って。板垣鷹穂の『藝術閑考』(昭和7年、六文館)、函はないけど珍しい一冊で、限定版。
 聞いてみると、どうだろう一分ぐらい中を確かめていただろうか。ぼくは、「函がないですねえ」などと余計なことは言わないで、ハラハラしながら待っていた。限定版という文字に気づかないでほしい。待っている時間が長く感じる。
 「これは1000円ぐらいはもらわんと」というやさしいお言葉、よかったよかった。
 10000円と言われても、とんでもない、と言い返せない本だ。
 板垣は、はしがきで、この本は、「しろうとの撮った写真のアルバム」と述べている。「生活の断片」とも。日記もあるし、特に「映画閑記」は面白そうだ。これは今年のベスト10に入るかも知れない買い物か。これは出るところに出たら高いです。
 このあとブックオフに寄るが何も買えなかった。
 予定に入ってなかったが、寺町のS古書店にも寄ることにする。これがよかった。
 店頭の200円台で、『荒村遺稿』、明治38年、國光社。復刻ではありません。
 松岡荒村は、社会主義詩人で評論家。足尾銅山鉱毒事件での、田中正造の思想に共感し、活動するが、25歳で夭逝。この『荒村遺稿』は、国歌批判の文章のため発禁になった。
 こんな出会いがあるので、古本生活はやめやれない。
 久しぶりに、しびれる一冊に出会えた。奥に入り、200円を払い、本を受け取ると、何とも言えない喜びに包まれて、古本の神様に感謝した。