古本ソムリエの日記

古書善行堂 山本善行

天牛堺書店

 あれっ、書いてた日記が全部消えてしまった。ショック。
 天牛堺書店の均一台の値段は、4日ごとぐらいだろうか、ころころ変わっていく。今日は700円だった。以前は電話で均一価格を尋ねてから行くようにしていたが、よく考えてみれば、前もって、なんて邪道だと思うようになった。男なら出たとこ勝負、値段に高いも安いもない、そう思うようになった。
 うーん、でも700円か。ちょっとガッカリして、頭を700円モードにする。700円が安いと言い聞かすわけだが、なかなか上手く行かない。「お前は100円で上林の「悲歌」を買った男ではないか」という声も聞こえてくる。
 それでも、何とか、渡辺武信の『詩的快楽の行方』と紀田順一郎『内容見本にみる出版昭和史』を買うことができた。それでレジ横の新刊割り引きの台をふと見ると(いつもは見ない)、麦田耕『俳哲 永田耕衣の文学青春』があった。こんな本が出ていたのか。全く知らなかった。平成18年、8月25日、田工房発行、印刷は、創文社、製本は、須川製本所。俳号を麦田耕とするセンスが少し問題だとは思ったが、買うことにした。永田耕衣にべったりでは困ると思ったのだ。
 棚にある、いい本を触らせてもらい、店を出た。
 安い本の顔が見たくなり、天神橋筋商店街へ。
 天牛書店の店頭。永井龍男『けむりよ煙』50円。背の文字が大きな角川文庫。昭和46年、初版。単行本は、文庫と同じ風間完装幀で、筑摩から出ていた。50円、これがうれしい。珍しさからいっても、今日買った本のなかで一番ではないか。岩田宏の小説『踊ろうぜ』100円、鮎川信夫『現代詩作法』100円、河原晉也『幽霊船長』がまたあった、100円。これだけ持って店内へ。かわいい平さんの笑顔がちらっと見えた。300円均一棚に、『中村光夫作家論集』が3册あった。赤ペンの線引きがあった一冊を残して2册を手に持った。(今日はかしこい)
 精算して外に出てもう一度見てみると、前から売れ残っている、福原麟太郎『この世に生きること』に目が止まった。なぜ売れないのか不思議だ。それなら買っておくか、とまた店内へ。一冊抜き出したことによって、スペースができて、追加補充しやすくなった。
 今日はそこまで考える古本ソムリエであった。