古本ソムリエの日記

古書善行堂 山本善行

広津和郎『過去』と野呂邦暢『小さな町にて』

 朝、目覚めると、雨の音が、起きずに寝ることに。
 休みなさい、ということなのだろう。実際、疲れている。
 10時頃、起き出すが、まだ雨が降っている。
 もっと休め、ということか。
 でも雨が止むことを期待して家を出て、ブックオフ三条店で様子を見ることにする。
 ちょっと小降りになったので、特急に乗りこんだ。
 毎日乗っていた電車なので、いろいろ思い出す。淀のあたりで見たことのない景色が。そうか上を走っているのか。マラマッドの「銀の冠」を読みながら、ときどき外を見る。また雨が降り出してきた。四天王寺をあきらめて、寝屋川で降りる。
 金箔さんと話しながら本探し。
 やっぱり買うのは楽しいな、と思いました。
 10冊ぐらい買いました。なかでも嬉しかったのが、広津和郎『過去』。岡倉書房の限定650部。いい本ですよ。
 大崎二郎という詩人の『海色抄』も買う。魚との対話を詩にしたもの。なかなかいい詩だと思ったので買う。
 こんな詩です。

 イワシ

 顎に手をかけ
 仰向けにしゃくると
 カッ と小さな音がして首の骨が折れる
 一指でわたぬきさり 親指の爪 腹背に入れて
 三枚に裂きおろせば
 含羞の赤身
 あたらし
 〈卑し魚〉などと
 いう勿れ
 海がぷんぷん匂うなあ
 ナニワの友は
 料理する片はしからその刺身を食いながら
 かたわらで酒をのみはじめる


 寝屋川のブックオフにも寄りました。寺山修司の『遊撃とその誇り』や、川本三郎の『大正幻影』を買う。
 ブックオフ三条店に戻り、ぐるっとひとまわりして、吉田佐和子銅版画展にむかう。
 銅版画を見ていると話しかけてくる吉田さん。
 ワインをごちそうになりました。

「どうですか、お味は」
「美味しいですね」
「えっ、不味くないですか、それ」
「普通に美味しいですよ」
「それ、不味いんですよ、味わからないのですか、こちらが美味しいですよ」

 不味いワインをまず出すということからして。わからない。

 家に帰ると、野呂邦暢『小さな町にて』や、小島信夫『暮坂』が届いていた。 
 もう一度読んでから売ります。

 四天王寺には、何とかして行きたい。チャンスはあると思う。
 善行堂、来週の火曜日は営業したいですねえ。
 連休なので、みやこめっせ、なので、たくさん来ていただけるのでは。