二月十四日 金子彰子
いわし焼く夕方
「焼き方が足りんぞ」
その一言に堰がきれ
とめどなく嗚咽漏らす
涙の中をいわしが泳ぐ
「私だってね、いるのよ、でもね、あの娘の霜やけの方が
好きなのよ、意地はっちゃってさ、それだっていうのに――」
コタツぶとんにしみ込みたい
実はもぐって赤外線は無色な筈?
「コタツを暖化して見せ・」
ふと・とぎらす声は誰のもの
私に聞こえるのは一つだけ
聞こえなくてもいいの
誰のために素直になればいいか
机の上はきまった形
ぐいと手を伸ばす
破き外して紙片を捨てて
結局趣味じゃなかったわ
はたから見ればなのめに
ぐじゃと一噛み噛み緊め
やみくもに涙すいこみ食べてしまった
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北海道の土合さんから、「八木義徳書誌」と図録「文学の鬼を志望す 八木義徳」を送って頂く。
これはどちらもすばらしい出来映え。いっとき、時を忘れてページをめくった。それにしてもこのエネルギーがすごい。
八木義徳さんも土合弘光さんという研究者を得て幸せな文学者だと思う。私も、
新発見とはいかないまでも、何かお手伝いできるかもしれない。