古本ソムリエの日記

古書善行堂 山本善行

堀口熊二訳『オスカア・ワイルドの傑作』

 やらなければならないことがあるのだが逃げるかのように家をでる。二条通りの「水明洞」「中井書房」から川端通りに出て「ブックオフ三条」、四条通りを越えて寺町の三密堂というのが今日の予定だった。残念ながら、水明洞の店頭100均箱は出てなかった。だからというのでもないが、今日は中井書房を隅から隅までゆっくり見ることにした。途中から何かを買うというのじゃなく、店の棚をチェックしているみたいになってしまった。欲しい本があるのだが、ちょっとのところで買えない。中井書房には、いい本がたくさんあった。その中から一冊買うことができた。小林儀三郎『椎の花』(昭和36年、文童社)。小林儀三郎さんは、『リアル』という雑誌の同人だった人だという。北川桃雄さんが序のなかでそのことに触れられている。内容に不安があるが(面白くないかも知れない)買って読んでみたいと思った。さてどうだろう。
 ブックオフ三条店でも一冊。四方田犬彦『漫画原論』(ちくま学芸文庫)105円。三密堂でも一冊。堀口熊二訳の『オスカア・ワイルドの傑作』、大正3年、榮文館書店発行である。ワイルドのお伽噺。古い翻訳書は安い値段で並んでいることが多い(この本も200円と安かった)。大正2年に出た、岩野泡鳴訳の『表象派の文學運動』などもそうだけれど、このあたりの翻訳書を読んでいたのが、小林秀雄河上徹太郎の世代だと考えられ、そのことからも研究の上でも貴重なものだと思う。また、序文が例外なくといっていいほど、面白い。思い入れたっぷりで情熱的なのだ。