古本ソムリエの日記

古書善行堂 山本善行

一時間文庫も好き

 昨日、「京都に住まえば…」の校正を終えて家を出る。仕事終えての古本屋めぐりは最高だ。ガケに寄って子子子ちゃんと少しおしゃべり。
 8月のガケイベントに、魚雷くんも参加してくれるとのこと。Lマガジン編集部も参加が決まり、さらに面白くなりそう。岡崎も参加してくれるだろう。
 B書店で、岡本太郎『青春ピカソ』300円。新潮社の一時間文庫の一冊だがこのシリーズの素朴な味わいは好きだ。河上徹太郎『私の詩と真実』、福原麟太郎『人生十二の智慧』、ヘンリ−・ミラー『性の世界』(吉田健一訳)などがこのシリーズから出ている。徳永直『小説勉強』、昭和21年に出た伊藤書店の人民群書だ。100円。タイトルをみて保昌正夫さんを思い出した。「年譜勉強」「事典勉強」という随筆があった。保昌さんのお宅を、松本八郎さん、扉野くんと訪れたことも思いだした。書斎でぼくと扉野くんが時間も忘れて、あれこれ話しながら驚きながら、本を手にとって、はしゃいだことも思い出した。松本さんが、「もうええかげんにしなさい」みたいな感じだった。なんかしんみりとなるなあ。
 他には、織田作之助を二冊。昭和22年に中央公論から出た選集の1を、100円で。それと大阪新聞社からこれも昭和22年だが、『それでも私は行く』300円。この本はたいてい状態が悪いんだ。京都が舞台の小説。
 福田屋書店に入り、少しおしゃべり。伊藤整の小説って今人気どう?と聞かれたので、小説より初期の詩集なら、すごい値段ですよ、と答える。でもこの小説はあまり見ないよ、と奥から取り出したのが、細川書店の『典子の生きかた』だった。
これも昭和22年。でもこの素晴らしさはどうだ。細川だよりも入っている。紙もいいし(和紙)装幀もすばらしい。岡本芳雄だろうか。校訂に雲井貞長の名前も。
値段をおそるおそる聞くと、2000円でいいよ、というやさしいお言葉。それで思いきって買うことができた。その上、横にあった、『新潮社七十年』を、これは勉強になるよ、よかったらあげるよ、とおまけしてくださった。すごいおまけによろこんだ。